第43号メールマガジン 2018年03月02日配信
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日本産業洗浄協議会 メールマガジン 第43号
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第43号をお送り致します。
今回は、(1)リレー連載 洗浄今昔物語 ④
(2)シリーズ連載:わが社のイチオシ製品
*このメールは、日本産業洗浄協議会の各種イベントでお預かりしたメールアドレス宛に
お送りしています。不要な方は、末尾にてその旨ご返信下さい。
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トピックス
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(1)リレー連載 洗浄今昔物語 ④ =モントリオール議定書採択30周年を迎えて=
日本産業洗浄協議会 名誉理事 小田切 力
自分自身のことをまず申し上げますと、学校では応用化学を専攻し、1956年に社会に出てからは
化学会社で働くようになり、会社の部署で一番永く担当したテーマは、工業用洗浄剤“1,1,1-トリ
クロロエタン”(以下、“エタン”と略)の用途開発と技術サービスで、そこから産業洗浄とのご縁が
生れました。
当時の社会では、化学品が人を幸せにして、化学工業は夢多い豊かな社会を実現する手段である
と期待されていました。それがいつの間にかそうではない出来事が多くなり、現在では化学物質の
管理が国際討議の対象となり、地域社会の狭い範囲の公害問題からさらに輪を広げて、社会問題、
政治問題がからむ地球環境問題に発展していきました。
公害問題から生まれた疑問
1956年前後の日本では、化学物質の管理に関する社会問題が大きく取り上げられ、議論の中心に
なりました。その年の5月に水俣病が正式に確認され、後に、化学工場の排水中に含まれるメチル
水銀化合物で汚染された魚介類を食べたために起こる中毒性神経系疾患であることが確定された
のです。 国連環境計画(UNEP)は、1972年に「国際連合人間環境会議」の討議が契機で設立
されましたが、UNEPのその後の調査に基づいて、水銀の自然現象および人間活動による排出の
リスクが明らかにされ、世界全体の水銀汚染の削減が国際条約で定められることになりました。
「水銀に関する水俣条約」はついこの間(2017年8月16日)に発効したところです。
熊本水俣病と新潟水俣病とで、多くの犠牲者を生んだ公害病の苦しみが条約の命名に遺されました。
いくつかの環境問題の試練を経て、地球保全に役立つことは何かと積極的に考える時代の到来と
なりました。
モントリオール議定書採択から30年
「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(以下、「モントリオール議定書」
または「議定書」と省略)は、1987年9月16日に採択されました。今年は、モントリオール
議定書採択30周年に当たり、もう早くも30年が経ったのかと思います。
日本では逸早く、その記念行事として環境省主催でのシンポジウムが開催され、参加致しました。
2017年6月17日(土)国連大学 ウ・タント国際会議場で行われた関氏の基調講演では、別の
視点からの化学物質と環境を考えさせるものでした。
議定書の規制強強化について語りますと長くなりますので、省略した説明にお付き合いください
モントリオール議定書は、採択(成立)の約15ヵ月後に(1989年1月1日に)発効(効力発生)
しました。この議定書は、発効する前から規制措置が甘すぎるという反対意見があり、その成層圏
オゾン層保護の議論では、洗浄溶剤であるエタンのオゾン破壊係数が小さくはなく、消費量が大きい
ことが問題視され、追加のオゾン層破壊物質として議定書で規制すべき対象となりつつありました。
成層圏オゾン層の回復のためには、
制措置物質としてエタンを追加 すべきである。
②規制措置として凍結、削減では不 十分で、早期全廃策が必須である。
等の規制強化が叫ばれ、国際会議で議論されることになったのは、私が定年退職間近かの頃で、
まさに青天霹靂の出来事です。
私は当時、クロロカーボン衛生協会で環境委員会委員であった関係で、1989年8月にナイロビ
(ケニア)で開催された「モントリオール議定書締約国 公開作業部会 第1回会合」に通商産業省
(現、経済産業省)のオブザーバーとして参加しました。
1990年6月の「第2回 モントリオール議定書 締約国会合」(ロンドン)に出席後は、新設
されたオゾン層保護対策産業協議会(JICOP)に1997年3月まで籍を置き、特に力を入れたテーマは、
産業洗浄分野におけるエタン全廃対策と途上国支援を中心とした諸活動でした。
その縁で、オゾン層破壊物質の規制を議論する世界に入りこむことになりました。毒性が低く、
油性の汚れをよく溶かすエタンは、特に中小企業では便利な脱脂洗浄剤として使用されていました
ので、フロンの規制が強化される場合には、有用な産業洗浄剤として生き残れる数少ない洗浄剤と
しても期待されつつあった時代でした。
その化学物質の使用を禁止すると、世界中のモノづくり産業に大きな影響を与えることになる
ことは目にみえていましたが、どの用途分野にどのように利用されているか、使用実態を解析する
統計資料がない各種業種の洗浄現場を把握するには、大変なエネルギーが必要であることが分かる
ようになってきましたが、国会の議論の対象にもなりました。
日本産業洗浄協議会(JICC)の誕生
脱エタンの活動を主目的として、改正モントリオール議定書(1990年、ロンドン改正)に基づく
エタンの削減、全廃を全国的に展開する新組織をつくる運動は、1992年の秋から始まりました。
当時は、1992年11月に予定されていた大幅な全廃前倒しの予感が、1992年11月の締約国会合で
現実のものとなりました(コペンハーゲン改正)。
脱エタン対策の国内関係者を誘い合わせ、賛同者が集まっても、議論が尽きず、団体としての
方向性が定まらないままに、最善策を模索する間にも議論が続きました。
その間、設立準備委員会のスタート(1992年9月)から新組織の設立総会(1994年4月13日)
まで、約1年7ヵ月の時間を費やすことになりましたが、それが幸いして、以下のような特徴を備
えた世界で初めての新組織を生み出すことに成功したのです。
① 洗浄に関係する4業種のメーカーの大同団結(洗浄剤、超音波主体の洗浄装置、スプレー主体の
洗浄装置、環境対応周辺機器の各メーカーを包含する)
② 上記4業種のメーカーが4つ部会を編成し、その4部会から副会長を選出
オゾン層保護対策産業協議会と相互に特別団体会員となり、2団体のチームワークでオゾン層保護
対策活動を運営
③通商産業省産業機械課と日本産 業機械工業会による会長人事、事務局運営等への支援
④通商産業省の3課共管による運営面のバランスへの配慮(化学物質管理課 オゾン層保護等推進室、
化学製品課(現在の素材産業課)、産業機械課)
この組織(JICC)が、エタン全廃の目標を達成した後も、解散せずに、さらに産業洗浄技術の
ユーザーも迎え入れ、新しい目標を設定しながら元気に活動していますが、それは現在のJICCを
支えている力の源泉が、設立当初に意気に感じて立ち上がった会員企業、役員会・委員会メンバー、
シニアアドバイザーの皆さんの情熱が次の世代に引き継がれているからなのです。
国会で問題となった脱エタン対策
1994年6月21日に、「第129回国会」の商工委員会(第9号)が開催されました。議題は
“特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律の一部を改正する法律案の審議”という
ことで、同改正法案は、1992年11月に開催された「第4回モントリオール議定書締約国会合」
(コペンハーゲン)で採択された議定書による規制措置の強化を受けたもので、全員一致で原案
通り可決されました。
その結果は、“エタンを1995年末までに(つまり1年半以内に)全廃する”ことになりました。
商工委員会の議事録には、以下のような質疑応答が記録されています。
岩佐恵美委員の質問(東京都出身 衆議院議員)
“(前文、略)第三に、特定フロン、トリクロロエタン全廃と中小企業対策について伺います。
特に究極の洗浄剤とも言われているトリクロロエタンの使用用途は金属洗浄が圧倒的ですが、
大部分は中小企業が使用していると言われています。
小田切力オゾン層保護対策産業協議会事務局次長によれば、通商産業省はその使用実態さえ把握
していないというではありませんか。
代替措置が円滑にいかなければ、1995年にはユーザーがパニックを起こしたり、廃業に追い
込まれ、日本の機械産業の存立基盤を揺るがすことになると指摘をしていますが、我が国の産業、
経済への影響として具体的にどのようなことを考えておられるのかうかがいたいと思います。”
このような討議の内容は後で知ったことですが、その時は、“JICCのスタートは世間の期待に応え
るべく最後の段階に滑り込んでおり、そのような懸念は無用でしたね。”と心の中でつぶやきました。
JICCがスタートしてまだ数ヵ月でしたが、経済産業省、中小企業事業団等の脱エタン対策調査
事業は、JICOPとJICC予定会員企業が組織した委員会により、懸案の調査活動として順調に
進められていました。
これは宇宙カレンダーにも載ることもなく、一瞬で消え去る脱エタン活動の一齣でした。
私はこの5月末に、日本産業洗浄協議会の実際の仕事からお別れすることとなりました。
その間お付き合い頂きました関係者の方々には、大変お世話になりまして、お礼の申し上げ
ようがございません。その間、皆さまにはあまりお役に立てずに、悔いが残るままにお別れする
ことは、まことに残念でした。
産業洗浄に関係する仕事では旭ダウ㈱時代を含めて46年間となり、JICCの設立前後では
新組織設立準備委員会の事務局担当、新組織JICCの企画委員会メンバーとしてのお付き合いを
含めて24年間、楽しく勉強させて頂き、有り難うございました。
(インタビュアー:目黒弘(2017年7月記))
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(2) シリーズ連載 わが社のイチオシ製品
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【荒川化学工業株式会社】
パインアルファST-252EVAは非引火性で低臭気、低毒性の安全性に優れた感温相
分離型の水系洗浄剤である。
洗浄工程では60〜70℃に加温して懸濁状態で使用する。
この油滴は油脂やフラックスなどに対する洗浄力が高いため、油性汚れを除去することができる。
一方、水相は被洗浄物上のイオン成分などの水性汚れを取り除く。これらの相乗作用により
高い洗浄性が得られる。
次にリンス工程では洗浄剤を常温で使用する。均一なリンス性が得られ、ワークを引き上げる際、
表面に高沸成分のみが残ることはない。また、リンス槽で使用した洗浄剤を洗浄槽へオーバー
フローさせ、再利用することができる。また、常圧下で蒸留した場合、組成変化を伴わず単一
成分と同様の挙動を示す。
本製品のユニークな性質を利用すれば、合理的かつ完全循環型の洗浄システムを構築でき、
環境負荷の低減に貢献することができる。
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最後までご覧いただきありがとうございました。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い致します。
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日本産業洗浄協議会(JICC)事務局
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